ビジネス・文化・観光の三拍子が揃う、江陵の無限の可能性
ソロル美術館《アグネス・マーティン:完璧な瞬間》開催
■ 展示概要
-展示名:《アグネス・マーティン:完璧な瞬間》
-期間:2024. 5. 4.-8. 25
-場所:展示室2&3
-主管:韓国近現代美術研究財団(KoRICA)
-ゲストキュレーター:フランシス・モリス(Frances Morris)
「私の絵画には対象や空間、線も何もありません。形態がないのです。そこにあるのは、溶け込んでいくような、あるいは形態をなくした形のなさについての、光や照度です。あなたがたは海に形態があるなどと考えることなどないでしょう。何にも出会わなければ、その中に入っていけばいいのです。作品は対象のない世界、あるいは障害物のない世界を創り出します。それはただ、そのまま視界に入りゆく必然性について受け入れるという意味です。海を見るために人けのない浜辺を横切る感覚と同じようなものです。」
-1966,アグネス・マーティン
ソロル美術館は、5月4日から《アグネス・マーティン:完璧な瞬間》を開催する。アグネス・マーティン(Agnes Martin,1912~2004)はアメリカ系カナダ人の女性画家で、1950年代以降のアメリカ美術を代表する作家の一人である。アグネス・マーティンを代表する作品54点が紹介される今回の展示は、リウム美術館、日本の大阪国立国際美術館、名古屋市美術館、ニューヨークのホイットニー美術館、ディア・アート・ファンデーションをはじめ、ペイスギャラリー、ジョージ・エコノムコレクションを含む海外の所蔵者の協力のもと成就した。また今回の展示には、テート・モダン(Tate Modern Museum)の館長を歴任した梨花女子大学招聘碩座教授のフランシス・モリス(Frances Morris)をゲストキュレーターに迎えた。
《アグネス・マーティン:完璧な瞬間》は、純粋抽象を追求したアメリカの作家、アグネス・マーティンの世界に焦点を当てた韓国初となる展示である。アグネス・マーティンは、コロンビア大学時代に道教および禅の思想を学んだことが、彼女の作風に少なからずの影響を与えている。同時期の韓国では、アバンギャルドな実験的アートと単色化が展開されていた。今回の展示は、アグネス・マーティンの作品活動を東洋思想の観点から眺める一方で、彼女の実験かつ瞑想的な活動を同世代のアジア作家と対照させることで、相互の関係と同調性を考察する場となるだろう。
展示は、1955年にアグネス・マーティンが構想画を離れ始めた時点からスタートする。この時期の彼女の作品は、有機的で生体的な形態から円形、三角形、四角形のようにより形式的で幾何学的な言語と淡い色彩へと変化していく。1950年代後半には対象の再現と模倣は消え、多様な線とグリッド形態が現れる。1964年に製作された「木(The Tree)」は、アグネス・マーティンのこのような変化を見せる革新的かつミニマルな作品である。
1967年、アグネス・マーティンはニューヨークでの仕事を辞めて旅に出た。その後、1974年にニューメキシコ州のタオスという小さな町に移り住み、作品活動を続けた。そして、2004年にこの世を去るまでの約30年間、同じスタイルを描き続けた。この時期のマーティンは、瞑想から得た「イリュージョン」を絵画的に表現し、独自の画風を確立していった。「完璧」を追求したマーティンは、作品のサイズ、色調、技法などを緻密に計画し、その中で色と線のみで画面を埋め尽くした。
今回、特別に展示される「ある晴れた日に(On a clear day,1973)」は、アグネス・マーティンの画家としての生涯において重要なターニングポイントを暗示する。シルクスクリーン技法で制作された30点の作品がアンサンブルを成す「ある晴れた日に(On a clear day,1973)」から、今後のマーティンの活動が形式と内容の面においてどのような変化を見せるのか予測できる。
1977年から1992年の間に制作されたグレーのモノクローム絵画は、マーティンの作品の中で最も神秘的で美しい作品である。今回の展示で紹介される8点のグレーのモノクローム作品は、作家が設定した制限の中で形、色調、質感の無限のバリエーションを示し、美の絶頂を経験させる。
最後に、アグネス・マーティンが晩年10年間に没頭したシリーズを紹介する。1993年、健康上の理由で老人ホームで過ごしていたマーティンは、毎日アトリエに足を運び、筆を置くことはなかった。体力も衰え、作品のサイズも縮小していった。1999年に制作された8点のシリーズ「純粋な愛(Innocent Love)」についてマーティンは、静かな瞑想の中で浮かんだイメージを描いたものだと語った。グレーのモノクローム作品とは異なる、仄かな光と悦び、そして礼賛が込められた「純粋な愛(Innocent Love)」シリーズとともに、マーティンは画家としての生涯を閉じる。
アグネス・マーティンは、深く心に響くアーティストであり、美しい文章を通じて人生とアートを観照し、洞察した。今回の展示では、文学的な感受性が盛り込まれたマーティンの抜き書きも紹介される。セミナー室では、2002年にアグネス・マーティンのアトリエを訪ねて彼女の独特かつ魅力的な姿をおさめた、メアリー・ランス(Mary Lance)のドキュメンタリー映画「世界に背を向けて(With my back to the world,2002)」が上映される。
アグネス・マーティンの作品は、作品をゆっくり鑑賞する機会を提供する。鑑賞者は、沈黙、淡く控え目になった色、柔らかくぼやけた縁、情熱が感じられる鉛筆の跡など、マーティンの繊細な作品活動過程を静かにゆっくりと味わうことができる。マーティンは、「自分の作品は自分と何の繋がりも持たない」とし、個人的な経験、意味、人生の洞察と作品を結びつけることを憚った。そして、「作品の価値は鑑賞する側にあり、自分の作品を鑑賞することは音楽を聴くようなもの」と語った。
マーティンは、一つの作品を鑑賞する経験について、「寄せては返す波、空を横切りながら流れる雲のように絶えず変化はするものの、本質的には同じ何かを眺めること」と比喩した。それは即ち、反復かつ思索的であり時間を超越して幸せを醸し出す経験、そして、アグネス・マーティンと鑑賞者に「完璧な瞬間」を贈る経験である。
[作家紹介]
アグネス・マーティン(Agnes Martin、1912~2004)
1912年、カナダのサスカチュワン州生まれ。1931年にアメリカへ移住し、ニューヨークとニューメキシコ州タオスで美術を学びながら講師として教えた。1950年にアメリカの市民権を取得し、本格的に画家としての活動を開始。1960年代以降に、アメリカ美術界を代表する人物の一人にまで成長した。当時のマーティンは、アド・ラインハート、エルズワース・ケリー、バーネット・ニューマンなどと交流していた。純粋抽象を追求したマーティンの作品は、度々ミニマリズムと関連する議題として取り上げられたが、マーティンはモンドリアンに分類されることを拒否した。
1960年代後半からは、ニューメキシコ州で一人暮らしをしながら独自の多彩なアート言語を発展させた。また、節制された方法で完璧な美と純粋を追求した。彼女の瞑想かつ叙情的な作品は、時代を超えて多くの人々に感動を与えた。そして2004年に、ニューメキシコ州タオスで92歳で亡くなった。
出典:ソロル美術館
공공저작물 자유이용 허락 표시